熊本
ジャズライブガイド

スタンダード解釈

In a Sentimental Mood

■コード進行
||:Dm11 DmM7|Dm7 D7|Gm GmM7|Gm7 Em7(b5)A7|
|Dm Dm#5|Dm6 D7|1.Gm7 C7|FM A7:||
|2.Gm7 C7|FM Ebm7Ab7||
||DbM7 Bbm7|Ebm7 Ab7|Fm7 Bb7|Ebm7 Ab7|
|DbM7 Bbm7|Ebm7 Ab7|C7sus4|C7||
||Bm7(b5) Bbm7|Am7 Ab7|Gm Gm7/F|Em7(b5) A7|
|Dm Dm#5|Dm6 D7|Gm7 C7|FM (A7)||

エリントンナンバーの中でもとてもモダンで美しいバラードで、多くのジャズメンがとりあげていますね。ひとことで言えば「クリシェの曲」といえると思います。AABA形式の32小節の曲ですが、最後のAはよくやるリハモを施してあります。もちろん、リハモなしでそのまま1括弧に戻っても差し支えありません。

また、冒頭2小節については、
|Dm DmM7/C#|Dm7/C Dm6/B|Gm GmM7/F#|Gm7/F Em7(b5)A7|
こんな風にやる人もいますし、こちらのほうが「クリシェの曲」らしいといえますね。どちらがやりやすいかは微妙ですが、ドミナントモーションがある上部の例の方が解釈しやすいのではないかと勝手に判断し、以下に解説します。

■解釈
●1,2小節:トニックマイナーのクリシェで、トニック音から半音ずつ構成音が下降していく形になっています。そして最後に3小節目のGmへのドミナントとしてD7があると考えます。ですからクリシェを無視して簡略化し、|Dm|Dm D7|という具合にとらえて、DエオリアンとDhmp5bスケールだけで処理することもできます。
ただここは、トニック音から半音下降していくラインをフレーズで表現することを身につけるべきところでしょう。そのためには一つ一つのコードに適応できるスケールをいちいち考えていくよりも、コードトーンだけでフレーズを構成してみる方がわかりやすいと思います。もちろん、最後のD7はHmp5bスケールを適用するとよいでしょう。

●3,4小節:1,2小節と同じ形のクリシェですが、これも無視して簡略化し、|Gm7|Gm7 Em7(b5)A7|と考えて、GドリアンとEロクリアン、Ahmp5bスケールで処理できます。もちろん、Em7(b5)A7はDmへのツーファイブですね。やはりここも1,2小節と同じ考え方で、クリシェラインをフレーズ化してみましょう。

●5,6小節:これもトニックマイナーのクリシェで、今度は5度音が半音ずつ上昇していくパターンですね。ここもクリシェを無視して簡略化し、|Dm|Dm D7|という具合にとらえて、DエオリアンとDhmp5bスケールだけで処理することもできます。構成音は変わってきますが、1,2小節と同じ考え方で、クリシェラインをフレーズ化してみましょう。

●7,8小節:Gm7→Gドリアン、C7→Cミクソリディアン、FM→Fイオニアン、A7→Ahmp5bスケール。普通にツーファイブですね。

●16小節:最後にDbMへ転調するためのツーファイブが入ります。公式通り、Ebm7→Ebドリアン、Ab7→Abミクソリディアンですね。

●17小節:DbMをトニックと考えると3,4拍目のコードはダイアトニックコードであるBbm7よりも、次のEbm7のドミナントであるBb7を入れたほうが「ジャジー(笑)になるような気がする。」と考えることができたら、ずいぶん学習が進んできた証になるかもしれません。f(^o^;もちろんアドリブをする際においては、リードシートを無視してそういう風にフレージングすることもあります。
しかしテーマ演奏においては、テーマメロディ(Eb音)との兼合いから、Bbm7の方が美しくサウンドします。

●19小節:もうだいぶお馴染なったのではないでしょうか。IIIm7,VI7ですね。Fm7はダイアトニックスケールであるフリジアンでもいいし、ツーファイブと解釈してドリアンでもいいです。Bb7はBbミクソリディアンですね。

●23小節:サビで転調したDbMから、元のDm(FM)トニックへ戻る準備のためのコードといえるでしょう。前回の「いそしぎ」に書きましたが、sus4は4度堆積コードと考えずに、分数コードと捉えたほうがわかりやすいと思います。今回の場合は、C7sus4=Gm7/C=BbM7/Cと考え、分子のコード感を表すつもりでフレージングするとよいです。Gm7→Gドリアン、BbM7→Bbリディアンですね。

●24小節:VIIb7であるC7→CミクソリディアンがトニックDmへのドミナントコードたり得ることは、これまでに勉強しているはず…。わかんない人は、もう一度はじめから読みなおし!(笑)
最後のAメロが1括弧に戻る場合(普通にやる場合、アドリブをまわす場合)は、3,4拍目にA7を入れたり、パッシングディミニッシュとしてC#dim7を入れるとさらにスムーズなコードチェンジとなります。

●25,26小節:Dmの代理コードであるBm7(b5)から半音下降していくリハモナイズです。Bm7(b5)→Bロクリアン(=Dドリアン)、Bbm7→Bbドリアン、Am7→Aドリアン、Ab7→Abリディアン7thをそれぞれ適用します。どうしてこういうリハモが成り立ちえるのかは、今のところ深く考えないようにしましょう。かっこいいからそれでいいじゃないですか(笑)。サビから一気にクライマックス!って感じになりますよね。アドリブの際もこのリハモチェンジに挑戦してみるといいかも。

とまあ、クリシェというのが難しかったかもしれませんね。はたで聴くと美しいと感じると思いますが、実際やる段になると「ただの飾りでしょ!難しいから無視無視!」なーんて思ったりして(笑)。
しかし、今回出てきた2種類のクリシェをはじめとして、さまざまなクリシェをマスターしておくと、いろんな場面で重宝します。コード1発の曲とか、バラードでコードが少なくて間延びしちゃうように感じる時とか…。
コード楽器の人は、そういう時にクリシェをちょっと挿むだけで、ぐっとサウンドが高級になったりしますし、アドリブをする際においても、普通のツーファイブフレーズではないクリシェフレーズは、ひときわ耳をそばだてる効果があると思います。
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