熊本
ジャズライブガイド

スタンダード解釈

アドリブ初心者のためのおすすめ教則本

ブルース・スケール Bb
ブルース・スケール Eb
ブルース・スケール C

世界的なジャズエデュケーターであるDan Greenblattという人が書いたものをATNが出版したものです。

これまでのアドリブ教本というものは、理論的な理解を重点としたものが多いですね。発想としては、「喋れるようになる前に、読めるようになれ」という感じです。僕がこのブログでやっている「スタンダードの解釈(初級)」も、そうですね。
これはこれで、最終的にはできるようにならんといけないのですが、こらえ性のない学習者というものは、わからない言葉が出てくるとネットで検索することもなく、わかってそうな人に質問してみることもなく、わからないままにして終わっちゃったりします。

その一方で、最初は理論的な理解というものに背を向けながら、アドリブというもの見よう見まねでやっているうちに、なんとなく理解できてきてバッチリできるようになったというパターンの人ももちろんいます。

そうした成功談を聞いて、「おいらはこっちのやり方でやるぅ!」と安直にとびついたはいいが、客観的には「それはフリーですか?」としか言いようのない無意味なフレーズを、なぜか得意満面にやり散らかす人がいるのは残念なことです。
で、僕はいろいろと試行錯誤しながら教え方を工夫してきたわけですが、今のところの結論としては、「理論から入るのが好きな人は理論から、実践から入るのが好きな人は実践から入るといいったい」という考え方でいます。というわけで、「読むのはどうでもいいから、喋れるようになれ」という発想の元でのカリキュラムを模索していました。

そんな中、本書に出会ったのです。

実践から入る人に「とんでも」な人が多いのは、理論に対する嫌悪感から来ているのか「アドリブにルールは無用!」と宗教的信条みたいに勝手に決めてしまっている頑なさが原因であることが多いような気がします。(理論から入る人も同じように「頑なさ」が上達しない原因であることが多い。)

理論というものを、文系の人が死ぬほど嫌っている物理の授業であるかのようにしかとらえられない人にとって、「アドリブにルールは無用!」という宗教的信条は、耳元に甘く響いてくるのでしょうが、堅くつぶった目を時々薄目にして開けて見ると、同じく実践から入った人がいつの間にか理論とも仲良くなって、「なんちゃってアドリブ」から卒業していく様が見えたりすると、内心「本当は俺も勉強したいんだけど…」と思っていたりするのではないでしょうか?

しかし、そこから上達していく人とそうでない人と別れてしまう分岐点はどこかというと、アドリブ演奏ルールの「増やし方」というか「順番の設定の仕方」にあると思います。ここで言うルールというのは、スポーツでのそれをイメージしていただければいいと思います。

本書の素晴らしいところはそこで、非常に簡単な課題から始まって、少しずつ難しくなっていきます。ルールが少しずつ複雑になっていくのですが、最初の簡単な課題をクリアした嬉しさを原動力とし、また一つ一つの課題を自分のものにしていく喜びを頼りに進んでいけるように、巧みに構成されているように思います。

このブログ上で理論的なことをよく取り上げているので、あるいは意外に思われるかもしれませんが、「読むのはどうでもいいから、喋れるようになれ」という発想は、素晴らしいものだと思います。実際僕も、最初は「ペンタトニックスケールでブルースのアドリブを演奏してみる」ことから入ったのです。

というわけでおすすめです。もちろん、本書をテキストに適切な指導者につくのがベストとは思いますが、独学でも充分勉強できると思います。
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